アメリカ銃社会の歴史と進まない銃規制の異常実態

『アメリカ合衆国憲法修正第二条』

アメリカ銃社会は現代社会において異質な実態です。
とりわけ先進国としてはかなり異質。

アメリカでは毎年、銃乱射事件が頻発します。
銃規制の進む日本から見ると「なぜ規制が進まないのか?」という疑問が浮かびます。

今回はアメリカ銃社会にフォーカスを当て、銃社会の異質さを取り上げます。

結論を端的に

●銃の国アメリカ
→普及率の高さ&殺人事件と関わる
→国民が防衛のために銃を持つ

●国の成り立ち
→君主制の否定
→民主主義のシンボルが銃
→アメリカ合衆国憲法修正第二条

●アメリカ合衆国憲法修正第二条の呪縛
→銃が国の主要なデバイス
→副産物として、凄惨な銃乱射事件

●最強のロビー集団NRA(全米ライフル協会)
→『銃が人を殺すのではない、人が人を殺すのだ』
→銃規制運動は一過性のムーブで終息する

アメリカという国と銃社会という繋がりはかなり異質で、根深い。
銃社会を生んだ背景には、国家形成の過程を追う必要があります。

アメリカの銃規制は建国の成り立ちにがんじがらめ。
成り立ちに寄与した最大の功労者である銃を取り上げることはできません。

そして、その副産物が凄惨な銃乱射事件を呼び込んでいるのでしょう。

NRAというロビー集団と、米政界の繋がりは強い。
NRAだけでなく、アメリカ人のどこかに銃を傍らに置いておきたい文化的側面はやはり根深いです。

一過性の銃規制運動ではなく、根本的な思想と向き合うべし
(言うは易し、日本人に理解しえない難しい問題)

銃社会のアメリカ

アメリカ銃社会

自由の国=アメリカ

アメリカといえば自由と資本主義。
華やかで、自由を謳歌をしているイメージが均一化しています。

アメリカのイメージ
  • 自由と法の下に統治
  • 世界最大の軍事国家
  • 世界最大の経済大国
  • 多民族国家
  • 銃社会

世界で最も豊かな国であるアメリカは多くの社会問題を抱えています。
人種差別、銃乱射など日本では馴染み薄い問題が根深く蔓延ります。

銃の国

アメリカで常に社会を揺るがしている問題が銃乱射事件です。
毎年、多くの犠牲者を出す銃乱射事件が繰り返し発生しています。

2017年:犠牲者数50人以上の銃乱射事件
2018年:ハイスクールで犠牲者20人近くの銃乱射事件

日本人の感覚では「何故、銃を規制しないのか?」という疑問が残ります。
殺傷能力の高い銃を野放しにする感覚が掴めません。

身近に銃がある社会

アメリカでは、現在2億7000万丁の銃が個人所有されています。
アメリカの人口は3億2000万人であり、銃の普及率の高さが伺えます。

殺人事件に占める発砲案件の割合も異常な数字を示しています。

殺人事件に占める発砲案件の割合
  1. 米国 64%
  2. カナダ 30
  3. オーストラリア 13%
  4. イングランド&ウェールズ 4%

殺人事件に占める発砲案件の割合は、諸外国と比べて異質な数字です。
同じく銃社会である近隣のカナダとはダブルスコア。

その他北欧の国も高い数字ですが、アメリカに比べると及びません。

いかにアメリカの銃社会がポピュラーであり、凶器化に繋がることが分かります。
アメリカでは銃が人を殺す武器(自衛する武器)として、根付いています。

諸外国の銃社会をまとめ

カナダや北欧の国など狩猟文化が根付い国は銃社会です。
ただ、これらの国とアメリカの銃社会は全くの別物。

●「銃の所持が認められている」≠「銃による殺害が多い」
アメリカの銃社会:「護身目的のための銃所持
カナダや北欧の銃社会:「狩猟目的

銃の所持率が低い国

日本は先進国の中でも銃規制が進んだ国です。

古くは豊臣秀吉の刀狩り、明治政府の抜刀令。
長い年月をかけて、武器を持たざる社会を形成してきました。

イギリス・シンガポール:日本と遜色なく銃規制が進む
→アメリカと同民族、多民族社会も規制可能

フランス・ドイツ:護身目的で銃の所持を認める
→かなり厳しい許可制限
→EUを代表する先進国でも規制可能

中国・インド:銃規制は進む
→人口が多くても銃規制は可能

世界全体を見渡すと、銃社会というのはかなり限定的です。
→一部、治安の悪い国では出回る

国民が防衛のために銃を持つ」というアメリカの考えは先進国としては異質な文化ということが理解できます。

アメリカという国の成り立ち

『アメリカ合衆国憲法修正第二条』

君主制の否定

アメリカ銃社会の異質な実態は「アメリカの成り立ち」を追う必要があります。
建国からの歴史を辿ると、文化と銃が密接に関わることが分かります。

アメリカは建国以前、イギリスの植民地でした。
当時、イギリスから莫大な課税を強いられていました。

アメリカに住む人々はイギリスの圧政に堪り兼ね、独立戦争を起こします。
アメリカは独立戦争に勝利し、建国に至ります。

アメリカ建国の裏側には、英仏という大国の否定です。
つまり、それは当時の大国が作り上げた君主制の否定でした。
(君主制:特定の1人が支配する社会)

アメリカは君主制を否定し、民主主義の国づくりを始めます。

武器所有の宣言

アメリカはイギリスからの独立に際して、武器(銃)所有の宣言をします。

君主制を打倒した民主主義のシンボルが銃でした。
そのため、銃を国民から取り上げることは君主制への回帰を意味してしまいます。

俺たち(アメリカ)は武器の力でイギリスから独立した。だから俺たちは庶民の武器を取り上げたりしない。武器の所有こそが、アメリカがアメリカである理由だ

A well regulated militia, being necessary to the security of a free state, the right of the people to keep and bear arms, shall not be infringed.『The United States Constitution、Bill of Right、 Amendment II』

有名な『アメリカ合衆国憲法修正第二条』です。
ここには、『規律ある民兵は、自由な国家の安全にとって必要であるから、市民が武器を保有し、また携帯する権利は、これを侵してはならない』とあります。

この文言はアメリカ建国者たちの理念が掲げられています。
「アメリカの国体は武器の所有によって、統治していく」という意志表示です。

この武器所有の宣言が今のアメリカ銃社会の根幹にあります。
銃社会は国の成り立ちと密接な関係があります。

『アメリカ合衆国憲法修正第二条』の呪縛

銃というデバイス

銃規制は君主制の復活

アメリカにとって、民衆の武装蜂起は自由の象徴です。
建国の産物が「民衆の武装蜂起(銃の所有)」です。

そのため、銃規制は建国の礎を否定することになります。
アンチ君主制のシンボルである銃を規制することは出来ません。

アメリカでは、銃規制が「権力者が居座る」という意味を持ちます。
即ち、君主制の復活を封じるためのイデオロギーとして銃社会なのです。

国の主要デバイスが銃

今の時代、民兵とか絶対王政とか時代錯誤です。
民主主義の日本には民兵も銃もありません。

ただ、アメリカ銃社会は文化という建前だけに留まりません。

アメリカは建国の過程から現代に至るまで銃が国の主要なデバイスとして担ってきました。
デバイスはあらゆる歴史の転換期で重要な役割を担います。

南北戦争、世界大戦、ベトナム戦争、湾岸戦争、イラク戦争
直接、間接的にアメリカ国民の傍らには常に銃が存在しています。

銃という主要なデバイスが創る大きな流れ
→アメリカ国民は銃によって、時代を切り拓く
→良し悪しは別として

悲しいかな、その副産物として、凄惨な銃乱射事件が起きてしまうのです。

繰り返される銃乱射事件

2017年ラスベガス・ストリップ銃乱射事件

アメリカでは昨今も凄惨な銃乱射事件が頻発しています。
記憶に新しいのは、2017年10月に起こったラスベガス・ストリップ銃乱射事件です。

この事件はアメリカ史上最大の銃乱射事件。
58名の犠牲者を出しています。
→犯人はフルオート機能を備えた銃を使用
→ホテルのベランダから狙撃
→短期間に多くの被害者を出す

2018年フロリダ州高校銃乱射事件

2018年にもフロリダ州の高校で銃乱射事件が起きました。
17人の犠牲者を出し日本でも大きく取り上げられました。
→容疑者は元生徒
→合法的に半自動ライフル銃を購入

2019年テキサス州銃乱射事件

2019年にテキサス州で中南米系移民を標的にした銃乱射事件。
20名以上の死傷者を出しました。
→同事件の24時間以内にオハイオ州でも銃乱射事件が起こる
→こちらは10名以上を超える死傷者

アメリカが銃規制されない理由

NRA

なぜ銃乱射事件は繰り返されるのか?

アメリカでは過去に遡っても、何十人もの死者を出す銃乱射事件は頻発しています。
単純な疑問として「なぜ、銃規制が進まないのか?」と浮かびます。

その点は、アメリカの建国の理念、銃社会への迎合と述べてきましたがそれでも納得は出来ません。

建国の副産物として銃乱射事件が起きるのは仕方ないのでしょうか?
ある種の代償として銃乱射事件を受け止めざるを得ないのでしょうか?

規制が進まないのはなぜ?

日本に暮らしていると、銃社会への理解は難しいでしょう。
何度も凄惨な銃乱射事件を生み出す構造は不可思議。

日本ならば、「池田小事件」や「秋葉原通り魔事件」の直後に、すぐさま再発防止策が練られます。
大規模殺害事件はその都度社会問題となり、再犯防止の構えが取られます。

アメリカは日本よりも新しいアイデンティティに寛容です。
そのアメリカで「なぜ銃規制だけが進まないのか?」、建国理念の裏側以外にも、アメリカが銃を手放さない理由があります。

最強のロビー集団NRA(全米ライフル協会)

銃規制反対派の最右翼として君臨するのがNRA(全米ライフル協会)です。
NRAは会員、約500万人を誇る全米最大の大規模ロビー集団。

銃が人を殺すのではない、人が人を殺すのだの有名なスローガンを掲げています。

アメリカ最強のロビー集団といわれるNRAはアメリカの政界に太く癒着しています。

彼らの主張はスローガン通り明解です。
徹底した銃規制への反対を謳います。

NRAの影響によりアメリカでの銃規制の法案はことごとく撤廃。

アメリカの議員も、NRAには頭が上がりません。
各団体に大きな影響をもたらすNRAの存在を無視すれば議員活動に支障をきたします。

いわゆる既得権益の温床です。
既得権益の温床が銃社会を生み出すという恐ろしい構造。

ムーブメントに留まる

アメリカ銃社会を規制するには、NRAやGOAの弱体化が必須。

どうやらアメリカでも、凄惨な銃乱射事件の後には銃規制が騒がれます。
市民団体や学生団体が、銃規制の声を一斉に上げます。

しかし、銃規制への運動は一過性のムーブで終わります。
銃規制への法整備となる前段階で、ムーブメントは沈静化するのが通例。

アメリカの銃規制を訴求する力は銃文化を覆すほどの力がありません。
浮動票はムーブメントとしての動きに留まるのが実情です。

NRAという既得権益を壊す勢いは生まれません。
アメリカ人の根幹はやはり「銃を傍に置く、自己防衛」の意識が文化として根付いています。

現在の銃規制への動き

ラスベガスでの銃乱射事件、フロリダでの銃乱射事件を経て、銃規制を求めるムーブメントはアメリカ国内で一層強くなりました。
2019年も銃乱射事件でテキサス州で中南米系の人を狙った銃乱射事件が起こりました。

トランプ大統領もNRAへの配慮を欠くことはできません。
とはいえ、国家元首として、凄惨な銃乱射事件を野放しにする訳にもいきません。

国民のムーブメントに則した行動は取りますが銃規制に関しては動かないでしょう。

トランプ氏がNRAを糾弾することは考えにくいです。
選挙結果がチラつけばNRAに厳しい対応はとれないでしょう。

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